はめ板の系譜

はめ板の系譜-形発見の旅-
  パズルボックスは難しかった。でもわかる形を見つけたよ。だからこの先もお祖父ちゃんと一緒に形発見の旅路を進むことができる。
 →福孫楽翁記
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 五輪のエンブレムをみれば、これが安定性と流動性、斉一性と多様性を併せ持つ洗練された形だ、ということは誰にもわかる。
 しかし、この形が「三種の菱形に内接する3種45個の長方形」で構成されているということを人は見て取るわけではない。→エンブレムの構造

 これは家紋である。家紋は画家によって手描きされたものではなく、熟達の職人によってただ一つの円から出発して、コンパスとルーラーだけを使って作り出される。
 繊細複雑な二羽の鶴をどんなに見つめても、小さな一つ一つの線が最初の円から派生してきたものだということは見て取れない。→家紋図の構造




 全体は部分で構成される。人は全体を見てそれがそれであることを知るが、多くの場合それを構成する部分については知らないままでいる。そして、それを知り尽くす人だけがエンブレムをデザインし、家紋を描き出すことができる。  

人がそうであれば、赤ん坊も同じだ。複雑な世界のあれこれについて、赤ん坊はそれがそれであることを見知っていくが、それを構成する部分の属性、形や色や大きさ、についての考えはまだない。対象の認知は対象の属性の認知に先立つ。(→Ⅱ巻,pp.**)
 そういうわけで、うさこちゃんのアニメが大好きな子どもがその構成要素のはめ板ができるというわけではない。全体から形を取り出し形として扱うために、人は形発見の旅路を辿らねばならない。(→色の場合)(→続きの頁:色の発見)
 人が積み重ねる形発見の旅路の全貌はとうてい知り得ない。しかし、子どもが「パターンの繰り返し」を好む時期があって、特定パターンに魅入る子どもの姿は形発見の旅路の奥深さを語るのだと思う。
 ともかく、人ははめ板から家紋やエンブレムまで、形発見の旅を重ねる。文字の習得は、その旅路のある局面で開ける風景であるに違いない。
 積み重ねてきた形発見の旅の経験に不足があれば、文字の習得は難中野尚彦,障碍児心理学ものがたり-小さな秩序系の記録-Ⅱ,2009,明石書店 第1章第1節しい。いきなり文字群に向き合えば、人は無秩序な線の集合に困惑する。「利発な子は六才になれば文字を教えるべし」と貝原益軒にある。文字の習得は文字以前のある経験の累積を必要とする、人はこのことを昔から知っていた。
 形発見の旅と言えば、〇△のはめ板から出発して言葉の獲得に至る、二人の盲聾児「しげことただお*1」のものがたりがある。(→Ⅱ巻,pp.**)
話すこと、書くこと、数えることに行き滞る子ども達に出会い、先達を模して〇△のはめ板を作り、形発見の旅に誘う。試みればいろいろなことがわかる。
 形は宇宙の法則*2だ。人はみな人の知る形を発見し、世界を共有して人と暮らす。しかし人の辿る旅のものがたりは、一人ひとり違う。
 子ども達の踏み進める道を探して、さまざまなはめ板が作られる。
① あるものは二次元図形に向かい、文字に進み、50音表になる。好みの絵柄に合わせてことばと繋がることもある。絵柄と文字が出会って語が作られ、語と語が結びつき文も作られる。(→下図)

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②またあるものは長さに向かい、数に至り、計算盤にも繋がる。(下図)













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③ 先に進むだけではない。〇△のはめ板は旅の入り口として、敷居が高すぎるということもある。
掴む放す入れる、「玉入れ」や「玉転がし」に戻って入り口を探す。棒に玉を挿し*1、積み木を溝に滑らせ*2、筒から押し出し*3、落し戸を支え*4、透明な机を下から覗く*5。その子どもがその時踏み出す道を探してさまざまな教材が作られる。(右上図)
*1(→だんごの背比べ)
*2(→スライディングブロック)
*3(→トコロテン)
*4(→ギロチン箱)、
*5(→ケイコさんの透明机)

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④ 形の宇宙 

 →形態質信号系の世界


➄ 同伴者

以下、→続きの頁

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